この記事は2022/3時点のものです。
僕は米国PE(Mechanical)で、2021年にPE登録を完了した。仕事はいわゆるプラントエンジニア系でこれまで設計や現場対応で技術と経験を積んできた。
当ブログでは受験の過程において実体験に基づく記事を書いてきたが、まとめの記事をここで書こうと思う。
なお、ベーシックな情報についてはJPEC(Japan PE/FE Examiners Council)やJSPE(Japan Society of Professional Engineers)のサイトをご覧いただく方が確実。
PEになった一人として、経験談から語る、PEとは。が本記事になります。エンジニアで海外志向の方の挑戦を後押しできれば幸いです。なお、PEになってどういうことがあったか、はこれからになるのでいつか追記したいと思います。
PEとは
まずはじめに。PEとは何か。
P.E.はプロフェッショナルエンジニアの略。
日本に技術士があるように、各国にPEの仕組みやルールがある。
アメリカのPEはLicense(ライセンス、免許)であり、定期的な更新が必要。日本の技術系国家資格で期限がないものも多いが、そういった”資格”とは異なる。
試験(Exam)を受け、ライセンス登録にあたってはさまざまな書類(Education/Experience)を提出し、ライセンス維持のためには定期的に自己研鑽に励み、更新する。
エンジニアとしての倫理も重要で、試験範囲にEngineering Ethicsが含まれる。ただスキルがあるだけではエンジニアの仕事はできないということ。
それは公共の福祉のため。
人々の安全や生活・健康に関わる設備を設計するエンジニアとしての心持ち・スキル両方が重要。そしてPEライセンスがなければアメリカではこれらの仕事をすることはできない、業務独占資格となっている。
JPEC・JSPEにも各々「PE」とはというページがあるので以下リンクから参照されたい:
なぜPEを目指すのか
仕事で米国PEを要求される人は取得しないといけない。
しかし、PEになるということはそれだけではない。NSPE(National Society of Professional Engineers)の”What is a PE?”から抜粋する。
To a client, it means you’ve got the credentials to earn their trust. To an employer, it signals your ability to take on a higher level of responsibility. Among your colleagues, it demands respect. To yourself, it’s a symbol of pride and measure of your own hard-won achievement.
信用、能力を証明するもの、….etc.
米国でPEとして仕事をしなくとも、上記は当てはまるのではないか。PEを持つ価値は十分にあると思う。
FE/PE試験を受けPEライセンス取得して得たもの
これはPEになっての個人的な感想であるが;
- 体系的に自分の専門分野を学びなおせた(意外と知らないことが多かった)
- 各種専門用語の英語に馴染むことができた
- US単位系に馴染むことができた(米国の試験なのでUS単位が多々使用される)
- PEライセンス登録にあたって、自身のキャリアを振り返ることに繋がった。自分の強みは何か、世界で何で勝負できるのか。
- 一定以上の知識と経験、スキルを持っていることを証明できる(試験に合格し、実務経験を有しないとPEになれない)。転職するかどうかはおいておいて、そのときは有利になることだろう。
これまでいろんな国内資格を取ってきたが、間違いなくPE受験は勉強になったので、取得の過程でも得るものはあった。
そして、エンジニアとしての覚悟や誇りのようなものも得られたと思う。職業はなんですか?と聞かれたら会社名や仕事の内容じゃなくて「Engineerです」と答える。自信を持って。
その他、取得してからのメリットはこれから感じるものがあれば、アップデートしていきたい。
PEになるためには。
PEを名乗るためには、州への登録まで完了しなければならない。試験に受かるだけでは名乗ることはできず、Exam, Education, Experienceが認められてPEになれる。
まず、必要な科目を大学で履修している必要がある(学科によってはそもそも受験資格を満たさない可能性がある)。Bachelor of EngineeringもしくはBachelor of Science in Engineeringの学位が必要との記載もJPECウェブサイトにある。そしてFE/PE試験に合格と共に4年の実務経験も必要。
ここからは日本在住のエンジニアがPEに取り組む場合を想定した手順例を示す。
- 日本PE・FE試験協会(JPEC)に願書を提出する
- JPECから審査通知を受領
- NCEES(全米エンジニア試験協議会)のウェブサイトに登録
- NCEESのウェブサイトからFE試験に登録
- FE試験受験
- JPECにPE試験の願書を提出
- JPECから審査通知を受領
- NCEESウェブサイトからPE試験に登録
- PE試験受験
- Credentials Evaluation資料を準備、大学や第三者から郵送(本人からの郵送は認められていない)*
- NCEESウェブサイトからCredentials Evaluationの登録・支払い
- NCEESよりCredentials Evaluationの結果受領
- 各州への登録を行う(州のルールに従う)
* 日本の大学でもABET(米国の技術者教育認定機関)と同等と認定されていれば、必ずしもCredentials Evaluationは必要ではないらしいので、一度確認するとよい
時系列で僕が都度残したメモの記事はこちら:
- Professional Engineerへの道。FE試験に登録する手順。まずは最初のステップを。(2019.8.3)
- FE試験受験。感想と、もう一度受験するかもしれない自分へのアドバイス(2019.11.1)
- FE試験(Mechanical)合格までに使用したテキスト・問題集、計算機などの紹介。どのように勉強したのか、も。(2019.11.9)
- PE Mechanical。試験の申込手順とかかった期間と費用。いよいよ試験は3ヶ月後。(2020.1.23)
- PE試験の勉強に使った参考書とかかった費用【Professional Engineer】(2020.10.8)
- PE試験のために準備・勉強したこと。受験してみての感想【Professional Engineer】(2020.10.12)
- Credentials Evaluationを完了するまでの手順【米国PEへの道】(2021.6.29)
- PEライセンス登録する州を考えたメモ(2021.8.1)
- PE Stamp購入。無事に日本に到着。(2021.10.12)
- 自分にとってPEライセンスを取得するということ。PE登録まで完了して。(2021.10.18)
言語
試験や登録にかかわるものは全て英語。ただし、JPECに提出する願書は日本語を使う。
FE/PE試験の合格率
FE/PE試験の合格率はそれぞれ概ね6-7割くらい(JPECデータより)。
そうすると両方一発合格は4-5割といったところになるだろうか。日本国内の資格試験に比べ高いように思うが試験は決して簡単ではないと感じた。
難しいと感じるかは人それぞれであるので、明記はできないが試験を受ける前に自分の実力と勉強時間がどれくらい必要か、よくチェックしておくとよいと思う。
PEライセンス登録までかかる費用
現実から目を逸らすことはできないので、お金のことも書いておく。2019-2021までに受験したケースの金額(参考まで):
FE試験出願料22,000円 (JPEC)
FE試験(CBT)200USD(NCEES)
PE試験出願料35,000円(JPEC)
PE試験(CBT)400USD(NCEES)
Credentials Evaluation 350USD(NCEES)
+ 州への登録料(登録する州によってコストは異なる。100-300USDくらいのイメージ)
1USD120円で計算して約16万円+州登録料。
ここには書類の郵送料やテキスト・計算機代は含めていない。
PEライセンス更新
PEライセンスの維持には定期的にエンジニアとしての勉強・活動も求められる。また各州のルールに従って更新手続きも必要。
- CDPとPDHとは。そしてどのように対応しているかメモ【米国PE】(2023.1.21)
- PEライセンス更新手続きをしてみて。感想。(2023.5.23)
おわりに
ウェブに情報が少ない米国PE。取得までの道筋とか、最後の登録まで網羅した情報が少ないので、1つの記事にまとめてみた。今後多くの方がPEに挑戦し、日本のエンジニアが世界で勝負していくことに少しでも役立てればと思う。本当に取り組む価値があると思うので、PEの裾野がもっと広がるといいなと。