先日サウジアラビアの石油プラントにドローンとミサイルによるアタックがあり、世界的なニュースになった。
Saudi oil attacks: Drones and missiles launched from Iran – US
メカニカルエンジニア的に結構衝撃的なニュースだったのでブログに思ったことを残してみます。
プラント設計と災害想定
プラント設計において何をどこまで考慮するのか、というのは非常に重要なポイントである。完璧に全てを防ぐ、なんてできない。
- 空から航空機が突っ込んできたら?
- ヘリコプターが落ちてきたら?
- 隕石が落ちてきたら?
- 過去経験したことがない地震が発生したら?
- 過去経験したことがない台風が直撃したら?
これらは設計寿命(25年とか50年とか)の期間に発生する可能性は限りなく0に近いが、決して0とは言い切れない。
どこかで割り切る必要がある。
例えば、完全に壊れないように設計して大きな事故は防ぐけど、変形しちゃうのはしょうがないと割り切る、とか。
ところが、今回のように攻撃されるケースもある。今運転しているプラントが建設されたタイミングでドローンアタックなんてリスクは想定していないだろうし、実際攻撃されちゃったとなると今後どうするよ、という問題が発生する。
実際ニュースで読むとなかなか恐ろしいものがある。
あれどうやって防ぐの?、と。考慮しないといけないの?本当に起きちゃったけど。
働いている方々の安全も守らないといけない。
不安定な地域での仕事はリスクがあるということなのかもしれない。
石油基地の持つエネルギーと災害ポテンシャルは尋常ではない。
国として、何かやりようがあるのか、プラントとして何かやるべきなのか?
ガチガチに設計するなら地下に石油タンクから配管からケーブルから全部埋めるとか?それともガチガチのセキュリティでドローンを敷地内に入る前に落とすとか?
しかし実際には大きな問題がある。
コストの話
1つ一般論として理解しなきゃいけないのは、物理的に可能な対策はやろうと思えばできるけど建設・対策コストが莫大になるということ。
それはそっくりそのまま消費者の払うコストに跳ね返る(石油価格や電気代など)。
無限に大きな地震なんて設計条件におくことはできない。必ず有限の条件をおく必要がある。風荷重も同様。
必ず適切な設計条件を定める必要がある。
設計条件を安全側にとりすぎると、設備に過剰な強度を求めることになり、機械設備はゴツくなり重くなり、それを支えるコンクリート構造物も鉄筋が増え杭も増える。
したがって、経済合理性を求めるなら(経営者として、そして消費者の支払うコストとして)、「適切な」設計条件を定めなければならない。
その“指針”や“基準”となるものは一般的には国や協会等が発行する。
そこを守っておいて、しっかりと設計しておけば、とりあえず法律違反ではない。しかしそれでもなお、想定外の災害が発生したときに何か起きれば誰かの責任になる。
国は守ってくれないだろう。これまでの歴史を見る限り。
何より大きな被害はなんとしても避けたい。しかしやりすぎではお金がかかりすぎる。
ここのバランスの取り方がすごく難しくて、設計者の腕の見せ所でもある。
設計条件をどのようにおくのか?
さて今回のサウジアラビアの件のようなケース。外から攻撃を受けるということについて、一企業ができることに限界があると思うので、国がどうするのか考えるんだろうなぁと思う。
これから調査が進んで新しいこともわかってくるのだろうけれど、気にしながらニュースをみていきたい。
雑感
技術の進歩とともに、いろんなことが起きるようになってきた。
地震、台風は昔からの自然災害だが、ミサイルやドローンアタックのような物理的な攻撃、そしてサイバーアタック。
色々と難しい時代になってきたのかなと感じた今回のニュース。
攻撃する側が本気を出したらプラント1つ壊滅に追い込むなんて簡単なのかもしれない。
今回の被害も狙ってあの程度にしているのだろうか。
どこまで狙って誰がどのように計画して実行したのか。
ちょっと恐ろしい。