橘玲さんの書籍「働き方2.0 vs 4.0 不条理な会社人生から自由になれる」を読み終えた。
これまで橘さんの書籍を読んだことがある人には既出の内容も少しでてくるが、改めて働き方という切り口で日本と世界の違いに言及しながら、これからの時代の生き方を提言してくれている。
具体的にじゃあどうしたらいいの?というところまではいかないので、少しモヤモヤするところもあるかもしれない。じゃあどうするか、は個人個人が自らの強みと置かれた境遇で考え抜くしかないと思うので僕はこれはこれででいいと思う。
この本がオススメな方
- 日本の働き方の問題点について改めて学びたい人
- 世界の働き方と日本の違いについて、知りたい人
- 著者橘玲さんの考える、これからの時代の働き方について学びたい人
本書での働き方の定義
最初の方で働き方の定義がある。
「働き方」を定義しておきましょう。….
働き方1.0 年功序列・終身雇用の日本的雇用慣行
働き方2.0 成果主義に基づいたグローバルスタンダード
働き方3.0 プロジェクト単位でスペシャリストが離合集散するシリコンバレー型
働き方4.0 フリーエージェント(ギグエコノミー)
働き方5.0 機械がすべての仕事を行うユートピア/ディストピア
日本の多くの大企業は働き方1.0というところだろうか。
個人単位ではすでに働き方4.0に達している人もいるかもしれない。しかし社会としてみれば、日本はまだ働き方1.0が大多数。
終身雇用制度に限界がきていることは誰が見てもわかる。
今は一つの企業が何十年も続くことの方が珍しい時代。会社がなくなってしまったり、どこかに買収されてしまったり、そういったことは大企業でも起きうる。
終身雇用なんてことは約束できない。
だからこの本のタイトルはきっと、1.0は眼中になくて「2.0 vs 4.0」としたのだと思う。日本の雇用方式の説明に結構ページを割いているけれど。
今の働き方では会社は優秀な人材を確保できない
人材は自分の能力をもっとも活かせるところに移動していきます。日本企業はこれから、ネットフリックスやグーグルのような「別世界」の会社とグローバル市場で競争することになるのです。
世界はネットの影響もあって日に日に近くなっている。日本を飛び出し海外に出て行く人も増えるだろう。
日本は英語の壁の問題があって、優秀だけど英語が苦手という人が多く残っていると推測。だけど、英語さえできるようになれば世界で戦える、そんな流れができたらどんどん流出するに違いない。
おそらくこれからの時代の流れは、「もう日本にいてもダメかも」—>「海外で活躍できるようにならなきゃ」—>「英語の勉強だ」—>「海外のいけてる企業で働くぜ」
となる気がする。
危機感は人を動かす。今の日本は居心地がいい。海外にいくことが必ずしも幸せとは思わない。だけど10年後どうなるか、多くの人が警鐘を鳴らしている。
「言ってはいけない」のではないかと思う内容も。
途中、日本の戸籍制度や年金制度、労働組合にも言及。
言ってはいけない?すれすれの内容もスバスバ切り込みながら日本の制度の問題を解説。これが切れ味するどく、読み手としてもうんうん唸りながら読んでしまう。
労働組合が守っているのは「労働者の権利」ではなく「正社員の既得権」だとか、親会社と子会社の待遇格差は身分差別だとか、キツい言葉も並ぶけど、決して否定できない面もある。
採用についての説明もしっくりくるものだった。
採用にあたって人種や性別、出身地、年齢などの情報をもとにすることは、いまでは差別として許されなくなりました。
ここまでは理屈として理解している人は多いでしょうが、だったらなぜ、日本の履歴書には写真を貼る欄があるのでしょうか。アメリカ人はこれを見ると驚愕しますが、これは顔写真が性別や人種といった採用とは無関係な情報を提供し、それを基準に選考することは差別と見なされるからです。—履歴書に記載するのは名前と連絡先のほかには、学歴、資格、経験、自己アピールだけです。
これは目からウロコだった。海外企業に提出するCV(職務経歴書)には確かに写真を貼らないし年齢も書かない。
名前、連絡先、スキル、職歴、資格、学歴などがメイン。そう、自分の能力と何ができるのか、何を学んだかのみを書く。
国が違うとどうしてこうも違うのかと思ったけど、そういうことだったのか、と納得。ちなみに別の本で読んだけど、名前を見ればアジア系の人か欧米系の人かはわかってしまうので、あえて別の呼び名で応募するケースもあるらしい。
続いて定年制について。
「労働者を年齢で差別してはならない」という原理を徹底すれば、定年制も違法になります。
定年についても、すごいことを書いている。だけどこれも痛いところをついていると思う。そうか、定年は年齢で無理やり会社を辞めさせる恐ろしいルールなのか。。。
確かに、60歳になったら突然能力が低下するわけじゃないから、おかしい。再雇用って制度もおかしい。
どの会社もやってるとそれが当たり前で疑問を持たなくなる。
これは極端な例なのかもしれないけど、そういった視点をもらえるのは面白い。
「前近代的な身分制」の産物であるサラリーマンは、バックオフィスの一部、中間管理職、スペシャリストの一部が混然一体となったきわめて特殊な「身分です」。こうした働き方はグローバルな雇用制度では存在する余地がありません。あと10年もすれば、サラリーマンは確実に絶滅することになるのです。
あと10年ですか。。。この根拠は知りたい。
でも、日本の年金制度はもうヤバイと言われているし、株価も日銀が買い支えているだけでそう長く持たないし、そういったものも含めてあと10年の間に大きな崩壊が起きる。
未来を見ている人たちは皆がそう思っているのだろう。
経営人材を育てるという名目でゼネラリスト育てる日本。他の部門を経験させるために人を定期的に異動させる。だけど、全員が経営者になるわけではない。
結局中途半端に専門性も持たない人が増え、そして3〜4年ごとに違う部署に異動し、一から仕事を始めたりする。これが業務非効率の理由の一つだと僕は思っている。数字的な根拠はないけれど。
中途半端になってしまうと自分の強みがないので非常に苦しい。いかにして武器を持つか。それを意識しながら仕事に取り組みたいところ。
世界の流れ
高度化するネットワーク社会で起きているのは、「会社から個人へ」という大きな流れです。そこでは「大きな会社」に所属していることではなく、個人としてよい評判を持っていることが成功のカギを握っています。
ネットワーク上によくも悪くも自分の情報が載っていたりする。
SNSをやっていれば、ちょっと調べれば何かしらの情報を得ることができたりする。
これは怖いことではあるけれど、逆手に取れば自分をアピールしやすいということでもある。
個人としてよい評判を構築することができれば、活躍の場を広げやすくなる。それがどのように効いてくるのかはわからない。わからないからこそ、僕はTwitterやブログを続けてみて何か起きるのか、何も起きないのか、試してみたい。そして、
- ギブできる人になること。価値のある人になること
- プロフェッショナルとしてあなたは何ができるのですか?と問われたときに答えられるようになること
これらを意識しながら生活していこうと思う。
おわりに
ザ・日本の組織で仕事をしていると、うんうん、わかるわかる、という解説が本書にはたくさんでてくる。それが事実かどうかはわからないが、とても説得力のあるロジックが並ぶ。
しかし本を読み終えたとき、
「で、どうしたらいいの?」
という疑問を持つ人もいるんじゃないかと思う。
それを考えさせることにこの本の価値があるのかな、と。
これからの時代、どうやって生きていくか。
やりたいこと・得意なことを見つけて、それを武器にする。じゃないと、長い間続けられない。
それを探す旅をつづける時代。
そして、その旅そのものを楽しむ、そんなマインドを持っておくといいのかな、と。
平成から令和、元号が変わったから何かあるとは思わない。けれども大きな時代の変化の中に生きていることは間違いない。
関連記事
- 「専業主婦は2億円損をする」強烈なタイトルの本が届けるメッセージから何を考えどう行動するか(2017.12.12)
- 「お仕事はなんですか?」と聞かれたら。どう答えますか?(2017.12.14)
- 橘玲さんの「もっと言ってはいけない」を読んで。遺伝や人種、知能に関する本【書評】(2019.3.16)