例えば、ドライヤーの能力が1000W=1kWだとしよう。
関東圏の電力供給力がざっくり6000万kWとしよう。
関東圏の人口が4000万人程度とすると、一人1.5台ドライヤーを稼働させ、6000万台を「せーの!」で一斉に使ったら6000万kWの電力消費。
関東の電力供給を不足させることができる。
そんなことするか、というコメントをいただきそうだ。
その通りである。
今日の記事の趣旨はそこではない。
こういった身近な例を使って頭でイメージすると、漠然とした数字のイメージが少し具体的になる。
例はなんでもいい。自分が覚えられれば。そうするとビジネスとか何かの検討をする際に役に立ったりする。
冒頭のイメージで、僕は首都圏の発電能力の規模感を覚えた。
日本の人口は1億人を超えるくらい。首都圏は数千万人だろうと予想できる。
「首都圏の人がでドライヤーを一斉に使ったら電力供給をぶっ飛ばせるのか…
と覚えておくと、関東の発電能力の桁を間違えたりしない。5000-6000万kWくらいだな、となる。500-600万kWではない。
稼働率が○%で、このうちの何%が火力で、何%が再生可能エネルギーで…と覚えておくと必要燃料をざっくり計算できたりする。
感覚の大切さ
ここまでの話は一例として。
漠然とした数字をいかに感覚的に理解するか?
これはエンジニアとして仕事をする上で大切にしていること。
シミュレーションや解析なら、コンピュータが精度良く圧倒的な速さで遂行する時代。
人間の脳をどうフル活用しても叶わない。
コンピュータは正確。
しかしインプット値が間違っていたり、条件がおかしかったりするとおかしなアウトプットが出てくる。
それに違和感を持てるかどうか。
そこにエンジニアの価値があると思っている。
前の解析の設定をコピーして利用した際に、一箇所変更忘れがありました。とか。一桁違う数字が入ってました。とか。全くないわけではない。
「ナンカオカシイナ…」
そう思える感覚。
それは一朝一夕で得られるものではなく、経験や日々の業務遂行の中で磨いていくもの。
この条件の配管だったら、必要な肉厚はこれくらいになるハズ、とか。
これくらいの重量の設備なら、地震荷重はこれくらい、基礎はこんな感じになるだろう、とか。
この感覚は大事で、おかしな設計や判断をする確率を減らすことができる。センスと呼ばれるものかもしれないが、全体感とかミクロな視点とか「言葉で説明しにくい何か」を持って物事を考えられるスキル。
職人さんの世界もそういうのはあると思う。
「なんかおかしい」
だいたいそういう感覚は当たっているもので、それにより大事に至る前に対応をできたりする。
これを数値化したり、AIに学ばせたりしてさらなる高度化を図るのが2020年代の取り組みとしてあると思う。
けれども、すぐに実用化されるとは考えにくい。現場現物がある世界の複雑すぎる案件を対応させるのはまだ難しいから。
いつか自分の感覚や技術を言語化して、数式化してプログラム化される日が来るかもしれない。
(金融の世界ではトレーダーが既にシステムに置き換えられてしまった。)
そのときに価値があると思うのは、
- スキルを持っている人と
- それを言語化・数式化する人と
- プログラミングする人
- そしてそのプログラムやシステムが正しく動いているか評価する人
- あとそれをビジネスとして上手く成立させる人とか
僕が目指すのは1,2,4かなと思う。十数年現場でエンジニアとしてやってきたので。
3.はより重要になっていく。できればここのスキルも学んでおきたいところ。世界で勝負できる人になれるかもしれない。
おわりに
日本人は繊細な感覚を持つ。歴史や文化を見ても自信を持っていい。
それをフルに活用しながら一流のエンジニアを目指したい。僕はあと20年、もしかしたら30年と仕事をしていくかもしれないけど、現場を知るエンジニアは価値があると思っているので、そこは強みとしてやっていきたい。
表面的な稼ぐことだけに視野を狭めないように。
世の中で自分の価値を高めるために必要なのは、そこじゃない。
(「稼ぐ能力」を否定するものではありません)
今日の独り言おわり