阿部勇樹。J1リーグ通算590試合出場、75得点。日本代表53試合出場、3得点。
ジェフ市原(現千葉)でデビューし、2007-2010浦和レッズ、2010-2012レスター、2012-2021浦和レッズと長く活躍した選手。
日本代表ではW杯南アフリカ大会でアンカーとして出場し、自国開催以外のW杯で初のグループリーグ突破に貢献した。
浦和レッズでは2007, 20017年とACL(アジアチャンピオンズリーグ)優勝にチームを導いている。

ボランチのイメージが強いが、DFから攻撃的MFまでできて、フリーキックや高いPK成功率も含め攻撃力も備え、あらゆる場面で活躍できる能力を持つ選手だった。
ジェフでは21歳からキャプテンを任され、以降多くの年でキャリア終盤までキャプテンを務める。背中で見せるタイプのキャプテンではあったが、よく周りを見ていてチームを下から支えていたことは知られる。
僕はサッカーが好きでよく見るのだが、阿部勇樹さんは最も好きな選手の一人だった。ピッチ全体をよく見ていて、危険な場所を察知しては潰す。後ろから攻撃に貢献し、ゴールも狙う。目立たないけど、いるといないとで全然違うタイプ。一方で、熱いものを持っていて、体がボロボロでも弱音は吐かず最後まで戦い抜く。見ている人の心を動かせる選手だった。たくさん動かされた。
ちなみに我が子もお父さんの影響を受け、一番好きな選手は阿部ちゃん。2021年に引退してしまったが、今でも我が家の会話では名前が出る。好きな背番号は22。
さて、余談が長くなったが本書を読んでの感想。読もう読もうと思っていて遅くなってしまったが、読んだらあっという間だった。
読後の感想
Jリーグ、特に浦和レッズや日本代表のエピソードが語られることが多い。各シーズンの状況や選手の名前もよく出てくるが、見ていない人にはイメージが湧きにくいかも。
サッカー、特にJリーグをよく見る人はとても興味深く読むことができると思う。
本書では、オシムさんやペトロビッチさんなど、著者が指導を受けた監督を選手から見た文章が多い。それがとても参考になる。
オシムさんはとても怖い監督だったそうだが、なぜ叱られても納得いくのか、なぜ嫌な気持ちになることはないか。等。
ピッチ上でのキャプテンを長く勤めた阿部勇樹選手からの視点。監督として長く活躍してきたミシャ監督とオシム監督の共通点・違いも興味深かった。いい指導者に恵まれることのありがたさを学んだ。日本サッカーの今があるのは、こういった指導者が日本に来てくれたからなんだなと。
ビジネスの世界でも、指導者の役割は重要。世界で戦うには、世界を知る必要がある。
サッカーの本ではあるけれど、どうやってチームとして、日本として成長していくか、のヒントがこの本にはあると思った。
『僕はつなぐ』、タイトルに込められた想いは心に響く。
格言的な
20代後半のときの海外移籍に対する葛藤、悩みも響くものがある。
今いるクラブで結果を出してからいくべきではないか。でも今行かなければ引退後に後悔するんじゃないか。
2010年W杯南アフリカ大会に出て、世界で勝負したいと心が動き、当時阿部勇樹選手はイングランドのレスターへの移籍を決断する。
2010年天皇杯のとある試合だったと思うけど、移籍前に最後駒場スタジアムを一周してくれたのを覚えている。サポーターからは熱いコールが続いた。「世界を揺るがせー、俺らの阿部勇樹!」。愛された選手だった。
レスターではスタメン争いから這い上がっている。そういう経験もしているからこそ深みがあるのかもしれない。
イングランド2部のレスターで2年ほどプレーした頃、プレミアリーグのエバートンとJ1の浦和レッズからオファーがあったらしい。その際にプレミアではなくJ1の浦和レッズを選択。
これまた重要な決断だったはず。本書ではこの頃の話も語られている。
「だから僕は、決断した後が大事だと思っている。その決断が正しかったことを見せていく。正解にしていく」
おわりに
海外に挑戦するということ。そのタイミング。そして呼ばれて戻ってきてまた元のJ1のチームに貢献。苦難の道、中心選手として最初から闘い苦労して掴んだACL2017優勝。そしてそこから引退までの数年。本書に書かれる引退までのエピソードも阿部選手らしいなと思った。気配りのできる素晴らしい人柄。
多くの人に尊敬される選手。
色々と考えさせられた本だった。
阿部勇樹さんの求める一体感。それを監督として実現する日が来ることを見たい。
僕はスポーツとビジネスは似ているところがたくさんあると思っていて。サッカーに限らず、野球、ラグビー、テニス、etc.とこれまでも多くの一流選手・監督に関わる本を読んできた。
今回も個人的に読んでよかったと思える一冊だった。
「また戻ってきてよ」そう言われるような選手・コーチでなくては。そのヒントがこの本にはたくさんあった。
