2024年の夏にさんふらわあに乗船し大洗から苫小牧への旅を楽しんだ(さんふらわあ さっぽろ 夕方便(大洗—>苫小牧)に家族で乗船したメモ。)。
次はどこにしようと探していて、海外旅行もいいよな、というのと組合せで日韓航路のフェリーを検索するに至った。
ウェブをうろうろしていると辿り着いたのは、JR九州高速船株式会社(JR九州の子会社)のクイーンビートルという船。
しかしながら、公式ページの読み込みが完了すると、以下が表示された。
….
何やら普通の様子ではない。2024.12.23ということで比較的最近のことだ。
「安全確保に関する重大な問題」、と。
自分の仕事柄、こういう案件は気になってしまう。
プレスリリースからリンクを辿って見つけたのが、第三者調査委員会の報告書。
PDFでトータル96ページ。
読み始めたら最後、ページをめくる(スクロール)する手が止まらない。
一文字一文字全て読んだわけではないが、通しで読んでしまった。
僕は現場にいた期間も長いが、いわゆるオフィスにいる管理部隊側の経験もある。
現場に近いところでは安全管理の責任を問われる立場で仕事をしたこともある。
安全に関する意思決定をすることもあった。
オフィスにいながらして、現場のトラブルや課題に向き合ったこともあった。
そういう仕事に関わる人にとって、この報告書から学ぶべきことは多い。
現場の葛藤、思考回路、その時その時の意思決定が生々しく書かれている。
しかしこのケースにおいて、現場および会社の選択は誤っていた。
安全は全てに優先されなければならない。この船は人を乗せて運ぶ船だった。
浸水トラブル。原因調査。クラックの大きさ。修理のタイミング。運行可否の判断。報告実施の対象、その基準。警報を発する計器の設定。やってはいけないことをやってしまった。最初はほんの少し、、という状況で問題ない感覚からスタートだったのだと思われる。それが徐々に大きくなったことが判断を難しくさせ、思考回路を狂わせたと想像される。
営業上の影響の大きさ、迷惑をかける範囲の広さ、苦しい意思決定を迫られる責任者の皆さん。
難しさや苦しさが痛いほど伝わってくる報告書だったが、それでもなお安全を優先させなければならない。
ここは絶対なのだ。
対策書にも目を通したが、組織のリーダーシップとして、何をなすべきか考え抜いた上での意思決定の重要性を改めて認識する。
経営者、運営に携わる方、船長、船員の皆さん、いろんな人が関わっていたと思うが、正しく対応することができなかった。何を最重要とすべきか、考え抜かないといけない案件だった。
なぜJR九州およびJR九州高速船株式会社はできなかったのか、そこを考えながら報告書を読み、明日は我が身と思い気持ちを引き締めることが重要と考える。
こういった事例や不祥事は、いつも小さなきっかけから始まると僕は思っていて、だからこそ小さいことでもちゃんとやることが重要だと思っている。ちょっとくらい、という緩みがいつか取り返しがつかないことにつながる。
ふと昔の自分の記事を探していたら、同じことを書いていた:“Don’t be evil.” Googleの内部ルールと神戸製鋼所のニュースから学ぶべきこと(2017.10.12)
Don’t be evil. はGoogleの言葉だが、これを組織として着実に実行することがどれだけ難しいことか。なぜ多くの企業が改ざんや虚偽報告だったり不祥事といったものに手を染めてしまうのか。繰り返すが、自分ごととしてよく考え、こういった事例から学び、日々行動しなくてはならない。
JR九州は運行再開を断念し、撤退する決定をした。船体に入ったクラックも深刻だったが、企業への信頼・ブランドに入ったクラックの方が深いのではないだろうか。
他山の石。学ばなくてはならない。
エンジニアとして、ぐさっと刺さる内容だったので、忘れないうちにブログに書こうと考えた。
安全第一。
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