以前から読みたいと思っていた木村伊兵衛さんの本。
今回購入したのは、『木村伊兵衛傑作選+エッセイ 僕とライカ』。
前半最初は写真多め、途中から文章が中心の構成。
考えさせられた。改めて写真について、考えさせられた。
何を写すのか。自分は何を写しているのか?
木村伊兵衛さんが写真を撮ることについて考えたこと、カメラについての洞察、ときに哲学的、大変勉強になる本である。
カメラは機械。機械がひとりで写真を撮ることはない。必ず人がそこにいる。被写体・対象をよく観察すること、カメラが自分の目となり手となり、自分の一部となること、それによって対象に融け込み一つになることができる。と。
対象をよく理解し、観察し、どこでどのように撮るのか、思いつきであってはならない。その対象をよく知る必要がある。どうしたら美しく撮れるか。
ふむふむ、むむむ、、と唸りながら読み進めた。
後半、コップを撮る場合についての話も面白かった。
ただコップをコップとして撮るのか。そのコップに生活感だったり、季節やその場の雰囲気が映らないといけない。その光を捉えないといけない。
物体を撮るのか。光そのものを撮るのか。物体も光も含めて撮るのか。
本書は、考えさせられる本だと思った。何気なく撮る写真もいいのだけど、突き詰めていくとき、本質は何か。僕は何を撮っているのか。
その他面白かった話
ブレッソン氏がレンズごとにファインダーの視野が出ないカメラの仕様に不満があったという話。フレームセレクターレバーが後になって搭載され、ブレッソン氏はファインダーをのぞいて視野を決めてからレンズ交換をしていたそうだ。
なるほどー。構図を考える際にフレームセレクターレバーを使うのか、と改めて理解。正直、僕は実用的に使ったことがない。。デジタルの今はとりあえずそのレンズで一枚撮って、みたいなこともできるけど、それじゃダメなのかな。瞬間を逃さないために適切な画角のレンズを素早く確認して交換することが大事ってことか。いろんなものをそぎ落としたM11にも残してある機能なので、そこにはLeicaさんが重要と思う何かがあるのかもしれない。。
また、カメラの歴史もこの本から学べる。おもちゃのようなカメラを使っていた時代からM型ライカまで。
1/100とかのシャッタースピードで写真を撮れるようになった時代はそんなに昔じゃないんだなぁ…と。長時間露光となると人の自然体を収めることはできない。コンパクトで持ち運べて、明るいレンズが出てきてSSを小さくできて、初めてスナップ写真や自然なポートレートが撮れる。こういう写真が撮れるようになってまだ100年も経っていないくらいなのか、と。
今1/4000とか1/8000とかで撮れるからな、すごい時代なんだなと。
最後の方の徳川夢声氏との対談。あれ、木村伊兵衛さんにはこんな側面もあるのか、と面白く読める。とにかく話が面白い。
おわりに
本書は写真を撮る人、特にライカに興味がある人は興味深く読めるだろう。おすすめしたい一冊。
自分が撮る写真について、哲学的に考えるきっかけになると思う。
僕はまだ考えが足りないし写真の技術も圧倒的に足りない。たまにライカのカメラが出すすごい写真にうっとりするくらいの楽しみ方しかしてない。もっとM型ライカを持って撮りたいな、のめり込みたいな、と思った。