「エンジニアとして世界の最前線で働く選択肢〜渡米・面接・転職・キャリアアップ・レイオフ対策までの実践ガイド」はアメリカでの就職・転職を目指している人を始め、海外で仕事をすることを考えている人にぜひ読んでもらいたい本。
著者:竜盛博さんの専門はSoftware Engineer。日本で育ち、就職し、日本ヒューレット・パッカード在籍中に米国駐在。その後Amazon.com等のシリコンバレー・シアトルエリアでの会社で勤務経験を持つ。
海外勤務をみんなすべきだ!という論調ではなく、いいところと良くないところをニュートラルに経験に基づきながら解説してくれる。
その生の情報はとても納得感のあるもので、海外での仕事を経験したエンジニアの貴重な意見を伺うことができる。
僕は2年半ほど海外でエンジニアとして仕事をしたことがあるけれど、それは日本に所属する会社からの指示に従ってトライした側面が強い(海外駐在的なもの。ただし上司は外国人だった)。実際に自分の意識で道を切り開き、海外で仕事をするというのはどういうことか?。そんなことをイメージできる良書だった。
この本はこんな人におススメ
- 海外(特にアメリカ)でエンジニアとして仕事をしたい人
- ソフトウェアエンジニアとして海外で就職する準備をしている人
- ソフトウェアエンジニアでなくとも、海外で就職することに興味がある人
- 海外での就職・転職についての考え方を学びたい人
面接に関わる話が豊富
まず海外で就職するために超えなければいけないハードルが面接。応募し書類審査を通過すると面接までたどりつくが、そこに至るまで、そして面接への臨み方に多くのページが割かれている。
ソフトウェアエンジニアの面接の話なのでコーディングに関する情報もたくさんあるが、それ以外の部分でもとても勉強になった。
また、合格通知をもらったあとの給与の交渉等にまで触れられており、あまり聞けない情報も豊富。
それだけ重要なことなんだろう。そしてこういう話はあまり聞くことができない。そこにこの本の価値があると思う。
転職に関する話
転職は、次の会社に入ることともに、前の会社を辞めることも意味する。
ここにあたっての心構えや気をつけることも本書では言及されている。アメリカでは転職は一般的なことであり、元の会社に戻ることもあれば、前の会社で一緒だった人が転職してまた同僚となる可能性もある。だから「元に戻れるようにしておく」ということも重要。
うむうむ、なるほど。
本書で紹介される働き方についての情報も大変有用
生産性向上という言葉が叫ばれる現在の日本。先端をいくアメリカでの肌感覚はどうなのか。そのあたりの一部を垣間見ることができる。
なかでも参考になったのはこれ。
タイトな時間でアウトプットを上げるために、仕事時間を25分間ずつ区切って、その間には1つの仕事しかしないという「ポモドーロテクニック」はけっこう人気があるようです。私も使っていますが、「この25分間はこの仕事しかしない」と意識するのは、集中して仕事をする方法として効果大です。
なるほど、これはすぐに実行してみたい。
仕事だけではないと思う。今の時代、ちょっと隙間時間があればtwitterやらネットサーフィンやらで時間を潰せてしまう。これがダラダラ時間を過ごすことにもつながって結局まとまった時間を浪費することも多い。
1つのことに集中する、を意識しよう。
ミーティングについて
ミーティングについてもどうするといいか、が語られている。
そういうわけなので、いざミーティングに出席したならば、ミーティングに貢献して議論を進めることが非常に大事になります。
これは僕が日本に帰ってきてから周りに伝えていることと同じ。
会議で発言しない人が多すぎる。
会議で発言しないということは、仕事をしてないと思われるんだぞ。と言うのだが、忖度すると言うか、反論を恐れるのか、それでもしゃべらない人は多い。
「会議に貢献する」この意識が重要である。
続いて、自分がミーティングをするときのヒントももらえた。
自分がミーティングをホストする時に大事なのは、ミーティングのゴールをはっきりさせることです。ミーティングの招待メールにゴールを書き、ミーティングの最初に口頭でも説明するのがお薦めです。
忙しいと、ついついミーティング招待メールを送り、そのままの勢いでミーティングに臨むことになってしまう。これは結果的にいい成果に繋がらない。
せっかくやるのだから、準備をしてしっかり成果を出す。これを意識したい。
日本は本当に無駄に会議が多い気がする。なんとか文化を変えていきたい。
これからの時代を生きるための気づき
「これを覚えれば安泰」という技術は存在しないので、スピードが遅くなっても、常に新しいものを吸収し続ける必要があります。自分の知っている技術が時代遅れになり、新しいものがわからなくなって「こんなはずではなかった」と思うことがないように、自分の武器は常に磨いておく必要があります。
これ。
これはみんなが意識しなきゃいけない。
僕は日本の生産性向上で一番大事なことがこれだと思っている。
終身雇用に守られると、どうしても自分を磨くことに対するドライブがかかりにくい。保守的に、それとなく定年までやり過ごせば、人生それなりに暮らせてきた。
でも今はそんな時代じゃない。10年経たないうちに大きな変化がくると思う。
武器を磨きつつ、新しい武器も身につける。継続。
「自分がいつでもほかの会社に移れる状態にすること」が、レイオフ対策として一番重要なのです。
今の会社がなくなったとき、どこかの会社が自分を欲しいと思うかどうか?
答えがNoならやばい。
自分で会社を経営することを考えた時に、自分が自分を必要ないと思うのなら誰が雇ってくれるだろうか。
いつでも他の会社で働けるように実力を磨きつづけよう。
おわりに
本書の最後の方にあるコラムで「私のレイオフ体験」というものがある。経験者でしか書くことができない心境がリアルに描かれている。その現実が読み手の心にもささる。
本書の冒頭、アメリカで働くいい面も悪い面も伝えたい、と書かれているが、後者はこのコラムだけでも十分伝わってくるのかなと思う。
終身雇用なんて言葉はこれから廃れていくに違いない。もうすこし時間が経てば、そういう時代もあったね、となるだろう。
そんなとき、自分の武器をどう磨いておくか、が重要。
これは間違いない。
この時代の流れに気づけないと、生きる力を持たないまま次世代に突入することになる。
グローバルな世界がつながっている現代、戦う相手は世界中にいる方々。
日本で仕事をしていてその力は身につくのか?世界で勝負したものしかわからないことがあるのではないか?
なんでこの本を読んだのか?なんで僕はこんなことを考えているのか?
それは過去の投稿を読んでほしい。
2019年、僕の人生に大きな転機が訪れている。ここでこの方向に舵を切るかどうかは自分次第。うまくいくかどうかは運もあるだろう。
物語はつづきます。