エンジニアが学んだことをお伝えします

『コーチングとは「信じること」』を読んで。この本は単なるラグビーのコーチングの本ではない。鋭く日本文化を観察し言語化してくれている本

2018-07-16Book

『ラグビー日本代表ヘッドコーチ エディー・ジョーンズとの対話 コーチングとは「信じること」』を読んだ。

Eddie Jones (エディー・ジョーンズ)氏はオーストラリア出身で、1992年まで現役を続けその後に指導者に転身。ラグビーのオーストラリア代表や日本代表のヘッドコーチ(2011-2015)を務め、2018年現在はイングランド代表のヘッドコーチを担っている。

僕はラグビーは見たことはあるがそこまで詳しくない、選手の名前もあまり知らないくらい。

たまたま縁があって今このタイミングでこの本を読むことになった。


エディーさんは、コーチングはアートだと言い、プロフェッショナルな仕事に対しこだわりを見せる。

ラグビーの話が多いかと思いきや、めちゃくちゃいいことが分かりやすくたくさん書いてあった。

日本の文化に対しての観察も鋭く、教育に携わる人、組織で指導的役割にいる人は皆読んだ方がいいんじゃないかな、と思うほど。

外から日本の文化を観察するとそう見えるんだな、ということも学べる。また後半にはヨーロッパ各国のラグビーのスタイルと国・国民の性格を分析した章もあったりと、彼の観察眼からの考察を読める。


しかしこういった出会いがあるから読書というのは素晴らしい。非常に多くを学ぶことができたので、今日はその一部を紹介したい。

自分の長所に気づかない社会

「サントリーの選手と一対一の面談をしたことがありました。私は、選手一人ひとりに『あなたの強みは何ですか?』と質問したんです。そうしたらみんな判で捺したように、自分の出来ないことを三つくらいあげるんです。そんなことは聞いていない、強みを教えてほしいと話すと、選手たちはそこで黙ってしまう」

謙虚さというのは、日本のいいところである。一方で、長所を前向きに評価したがらず、否定的な部分を変えていくことに気持ちを向けてしまうのが日本の社会。

なるほど。改めて言われると、その通り。

自分の能力をしっかり認識し、その強みが組織にどう活かせるのかを考える。違いを生み出す人間は必ず必要だから。

「横並び」

「普通でなければならない」

こういった雰囲気が日本にある。海外の人からみたら不思議に見えるのかも。

自分はこれをできる、と自信を持って言える武器を磨き、それをマネジメント側も理解し伸ばし組織で活かす。

なんでこれがうまく日本はできないのか、個人的に思っていることはある。

それは転職市場が閉鎖的なこと。

転職というのはまだまだ一般的になりきっていない。多くの生え抜きが会社をささえている企業は多いと思う。

会社としては、どのポジションでもある程度仕事ができる人材を育てたい。なぜなら事業環境が変われば仕事が変わってしまうから。簡単にはリストラもできないから。終身雇用という言葉がのしかかる。

そうするとどうしてもなんでもできる人が重宝される。

サッカーで言うところ、「ドリブルだけは絶対に負けません」という人よりも「守備も攻撃もそこそこ、怪我もしにくいし無理が結構ききます」という人の方が重宝されやすい。

でもみんなが後者のメンバーの試合を見たって面白くないし、決してそのチームは強くない。

だけど、日本の会社ってそういうところが多いんじゃないかな、と。特に大企業。

プロ野球でもJリーグでも選手は結構チームを移籍している。ビジネスパーソンがそのように動く時代もいつかくるのだろうか。

なぜ日本にはリーダーが育ちにくいのか?

自分で決める、そういったリーダーは少ない。みんなで決めよう、といった風潮がある。

会議が多い割に物事が決定しない、意思決定が遅い、とよく言われるが、それが日本の弱点だと思う。

「日本は国土の面積が限られていて、非常に狭いところでみんなが暮らしています。人口密度が高い国では、どうしても『一緒に連携を取って仕事をしよう』という共存の発想に傾くのは自然でしょう。それが役割分担を重視する気質につながっているのではないでしょうか」

これもとても納得感がある。。

事実かどうかはわからないけど、軋轢を避けようと忖度する日本の文化のルーツはこういったところにあるのかも。

スポーツでは一瞬の判断が命運を分ける。選手には、常に責任を持って決める、そういった決断力が求められる。

日本人は指導者の言うとおりにやっておこう、というふうになりがちとよく言われているけれど、社会全体に蔓延する雰囲気を変えるところから始めないといけないのかも。

気づかい、心配りももちろんいい文化だと思うけど。勝負の世界には合わないのかな。と。

『ノーミス志向』

日本が想像力の歩みを止めてしまった背景には経済的な基盤が安定し、「ミスをしない」ことが支配的になってしまったことが根底にあるという。

先日のサッカーワールドカップでも、ミスを批判することについての是非について議論があったが、自ら考え決断した選手を否定してしまう人が多い。

逆に目立たないプレーでも素晴らしい判断があった場合、そこは注目されにくい。


よく日本のサッカーはつまらない、と評する記事も読むが、我々日本人が日本のサッカーをつまらなくしているんじゃないの?と思うに至った。

「ミスをすれば批判される。なら、ミスをしないようにプレーしよう。」

こんな思考回路が選手の心の奥底に刺さったままであれば、チャレンジングなパスやドリブル、アタックは生まれにくい。

僕らはもっとスポーツについて勉強し、あそこのあの判断がよかった(たとえプレーはミスったとしても)、といえるようになったほうがいいんじゃないか。わかりやすいゴールにつながるプレー、ゴールを守るプレーだけじゃなくて。

ミスを指摘し原因と責任をクリアにすることも大切だから、目をそらしてはいけない。でもバランスが批判の方に向かってしまっているのが日本。そしてこれは多くの企業も同じ病にかかっているのかなと・・・

おわりに

気になったところが日本のマイナス面をズバッと言ってくれている箇所ばかりだったので、今日の記事はそんな内容ばかりになってしまった。

でも、エディーさんは「アート」や「クリエイティブ」という言葉を何度も使い、前向きに明日からこうしよう、と思える内容が多い。

非常に面白かったので、コーチングに興味のある人、外からみた日本の文化(スポーツに限らず)に興味がある人は一度読んでみるといいと思う。

読後、明日からこうやって行動しよう、仕事をしよう、そう思える良書でした。

結構オススメです。

コーチング・マネージャーに関する書籍についての記事

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Yo
エンジニア(Mechanical)。日々の生活や読書、仕事などから学んだことをまとめます。
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