米国PE(プロフェッショナルエンジニア)は試験に合格しただけではまだ完了ではなくて、州に登録することで初めてPEを名乗れるようになる。
登録するにあたっては、FE試験・PE試験をPassしていることに加え、学歴と経験が必要。経験等を証明するために、PEやその人をよく知るエンジニアからのリファレンスが要求される。リファレンスは、この人はエンジニアとして信頼に足る人ですよ、だったりこの人の業務経歴は確かですよ、を証明いただく書類のイメージ。
これらの基本的な条件は同じなのだが、各州によって細かいルールや申請条件が異なる。非常に悩ましいので、自分で調べ考えたことをメモしておきたい。
なお、この記事執筆時点でまだ登録完了してません。
州を絞り込む
州によってはResidencyやCitizenshipのRequirementがあったりするらしい。日本にいるエンジニアが登録する際はそれらをチェックする必要がある。
まず、仕事でPEが必要な人は必要な州に登録するだろう。一方、僕のように特段州にこだわらないケースはどうすべきだろうか。
このあたりの情報はJPEC(日本PE・FE試験協議会)のWebsiteを見ると参考情報があるので見ておくと良いと思う。
数ある州の中で、JPECとMOU(Memorandum of Understanding)を結んでいる州が6つある。それらの州は、日本にいるエンジニアにも登録しやすいように規定の解釈を示してくれている。
MOUはJPECのウェブサイトで確認できる。
Link:各州の登録条件-JPEC
僕はReferenceを書いていただける米国PEの方が3人に満たないため、日本の技術士でもOKな州を選ぶ必要があった。MOUを結んでいる州から選ぶ必要があったため、これらの州について調べたメモを残しておきたいと思う。
JPEC applicantsとしてどうするかを調べたものであり、現地在住の方が通常の方法で登録するケースを調べたものではない。
なお、PE登録したわけではないので、あくまでウェブサイトからわかる表面上の情報を日本語でまとめたものとなる。必ずしも正しさを保証できるものではないが、少しでも参考になれば。
記載の情報は2021/7時点のものです。
各州の比較
まず最初に、前述のJPECのウェブサイトにあるMOUを読み込もう。ここでまとめるよりも原文をしっかり読んだ方が良いと思うので、あえてまとめることはしない。
ここから、各州のウェブサイトを回って調べたことをメモしていく。
Texas
Link:テキサス州ボードのサイト
Texas Boardのウェブサイトは情報量が豊富で、州法と合わせて読み込むと大変勉強になる。色々と整備されているのは、プラントも多いこの州で登録するエンジニアが多いからかもしれない。
登録を進めるためには、Online PE Application Systemのページでe-mailとPasswordを登録し、必要情報を記入していく必要がある。
記入完了し次のステップに進むと、一定の期間内に全ての書類を送付する必要がある模様。実は登録してほぼ入力完了するところまで行ったのだが、最後支払いして審査スタートすると期間制限が始まってしまうようで、最後のところで慎重になって一旦ストップした。
この州で特有と思われるのがCriminal History Record Check (CHRC)。無犯罪証明書のことらしく、指紋採取して色々と手続きがいるらしい。
その他にはEthics Examも要求される。
Texas州は、ReferenceはMinimum (3)とあって必要数は少ないが、at least (2) must be licensed in United States.となっている。米国P.E.の方から2通以上リファレンスをいただく必要があり、僕は要求事項を満たせない。
なんとかならないかと色々読んだが、ここは明記されてて難しそうだった。
North Carolina
Link:ノースカロライナ州ボードのサイト
比較的シンプルなウェブサイトでわかりやすいと感じた。
P.E.登録にあたっては、Individual Applicantsのタブから入ると登録方法が2つ。一つは将来複数の州への登録を行う場合、もう一つはNorth Carolina州のみへの登録の場合。
複数の州(Multiple States)への登録できるようにする仕組みだと思うが、MOUが適用されないと思われるので(例えば日本の技術士のReferenceもOKなのは一部の州だけ)、MOU記載の基準での登録を目指す場合はLicensure in NC Onlyを選ぶのだと思われる。
登録を行うべくクリックしていくと、Application Formにたどり着くので、記載すべきものは何かを確認することができる。
名前や連絡先、アメリカの市民か、各種質問、エンジニアとしての業務経験、学歴、Reference提供者の氏名と連絡先といった内容だが、NC州の登録フォーマットでは最後にAffidavit(宣誓供述書)の項目がある。
Application costは$100。
Kentucky
Link:ケンタッキー州ボードのサイト
Engineering License Processのページで、Foreign Applicantsという項がある。もしUS social security numberがなければNCEES ID#を使ってね、などという記載もあるのでここから登録するものと思われる。
Application feeは$300とちょっとお高めな印象。
あまり情報量がなくて、意外とこういうサイトの方がわかりやすく感じたりする。
Application formを見るかぎり、一般的な要求事項が求められているように思うが、一つ特有だなと思うのは、Experienceを証明する人とPersonal Referenceを提供する人は違う人ね、というところ。
また、Application formにはSupervisorもしくは申請者の業務をよく知る人・Reference提供者の連絡先を記載し、Boardの方からその人たちに連絡をするスタイルの模様。
Mississippi
Link:ミシシッピ州ボードのサイト
Mississippi BoardのウェブサイトにはJPEC applicantsのことが明記されている。JPECをサイト上で言及してるのはここだけかと思う。
Mississippi州のBoardのウェブサイトに入ったらSearch BoxでJPECと検索してみよう。JPEC formsという項に手順が記載されている。
まずSocial Security Number Affidavit formを提出すると、その後Board officeからemailが届き次のステップに進められる模様。
とりあえず出してみようか、と一瞬考えたが結局提出しなかった。なのでそこから先のステップは調べられず。
Missouri
Link:ミズーリ州ボードのサイト
MISSOURI州のウェブサイトは情報が豊富。Webサイト上で入手できるApplication formは説明事項や注意書きが多めで、丁寧といえば丁寧なのかなと感じた。
Experience Formを見ると、自分で記入するところと、Verificationしてくれる人が記入しサインする欄がある。
なんとなくやることが明確なイメージを感じたものの、進め方はBoardにいくつか質問しないとわからなそう。
Tennessee
Link:テネシー州ボードのサイト
実はあまり調べることがなかったTennessee州。ちょっとわかりにくく感じたのと、MOUのExperienceの項にwith at least (1) year of this experience completed in the United Statesとあって、米国で仕事したことがないのでこれは満たせないなと思ったことが理由。
おわりに
実は結構調べるのに時間がかかった、この「どの州に登録しようか問題」。
絶対ここ!、みたいなのがあればいいのだが、ないと悩むことになる。
米国PEの方からのReference要求をされるとなかなか厳しい人も多いんじゃないかと思うが、州によっては日本の技術士でもOKとされていたりする。
英語のスキルの証明が必要な州があったりとか、まちまちなので見比べて決めないといけない。人それぞれ経験や置かれている状況が違うと思うので、自分で考えて調べるしかないが、それもPEへの道の一つ。こんな感じで悩んだ人がいるらしい、という意味でこの記事が参考になればと思う。
とにかく登録しないとPEを名乗れないので、最後のひと頑張りしましょう(自分への言葉)、ということで記事をおわらせていただきます。
追記:業務経歴書の記載で気をつけたこと
なお、どの州でも業務経歴書に記載は必要。業務経歴書については、経歴を証明いただく方にアドバイスいただきながら仕上げた。基本的なところもあるが;
- 日本の履歴書と異なり、経歴は今に近い方から書く
- 自分がエンジニアとして何をやったのかできるだけ詳しく書く(○○projectに携わった、だけじゃなくて、自分が△△のcalculationをしたとか、XXをstudyして意思決定したとか)
僕は念のため英語については外部の機関にお願いして、ネイティブチェックをしてもらった。ここが必要かは人それぞれかと思うが参考まで。
どの州に提出するにしてもベースは変わらないと思うので、記載する内容については州選びと並行して準備しておくと良いと思う(業務経歴書のフォーマットは各州で少しずつ異なる)。