リモートワークだとか、オフィスなしの組織だとか、最近注目されているけれど、一朝一夕ですぐに運用可能となるものではない。
COVID-19の流行が起きる前から様々な取り組みを行い、すでに新しい働き方に移行しているソニックガーデンという企業の取組みがわかる本、『管理ゼロで成果はあがる「見直す・なくす・やめる」で組織を変えよう』を読んだ。Twitterでおすすめされていた本なのだが、そういう出会いも悪くない。
ソニックガーデンは2011年に創業したシステム開発を行っている会社で2018年8月時点で社員数は35名、ほとんどがプログラミングで仕事をするエンジニア集団。本社オフィスなし、社員のいる場所は15都道府県にまたがるなど、だいぶ時代の先を走っている感がある。
この本から、ソニックガーデンという会社で様々なトライをした上での経験、それに基づき構築された仕組みを学ぶことができる。
主な内容とこの本の特徴
タイトルにある通り、管理なしで成り立つ仕組みをどのように考え作ったか、が主な内容。
そして、「人が働くということ」にフォーカスしている。
どんなルールがあろうとなかろうと、そこで仕事をするのは人間。どんな人間と働くのか、そういったところにも踏み込んでいる。
一般的にリモートワークを行う上でのステップがあったりするが(例えば、ペーパーレスにする、とか)、それは表に出てくるものであり、本質はそこではない。形だけ真似したったうまくいくとは限らない。
どのように考え、何が効率的で、何が目的を達成できるのか、それを考え続け、試行錯誤をしながら前に進んでいく。組織の大きさやミッションによって最適解というのは違うのだから、本に書いてあることを何も考えずに真似してもうまくいかない。
この本のいいところは、どういう考えでそこに至ったのか、またうまくいかなかったケースにも触れられており、その辺りのプロセスを追えること。
特に心に響いた内容
人材について
本書は人材についてもページを多数割かれている。顧客の課題をプログラミングなどを活用しながら解決するといった、クリエイティビティが重視される会社には特に重要。一方で製造業の現場のようにある程度、規格や法律、ルールで定めるところが重要になる組織とは少し合わないかもしれない。
でも、「人」に関しては参考になるところがたくさんあるのではないだろうか。
本書の途中でセルフマネジメントできる人材について触れられていた。
セルフマネジメントとは「自分自身に成果を上げさせること」。
自分の将来を誰かが面倒を見てくれるわけではない。会社もずっと安泰という保証はどこにもない。自分自身で考え、学び、成長し、成果を出せるようになる必要がある。どこの組織に行ったとしても。これからの時代は。
セルフマネジメントの時代だ、と。
「つい残業をし過ぎてしまったりするのは、セルフマネジメントできていない証拠です」というのはグサリと刺さる。
「自分なりのストレス解消法を見つけることも、セルフマネジメントのうち」と….はい。
確かにそうだな、と思った。会社に言われたことをやればいい時代ではない。
会社が良かれと思って行う異動・キャリア構築が自分を助けてれるかというと、未来なんて見通せない時代。
未来についても自分で考え、成長していかないといけない。
「人を育てる」なんて考えずに「育つ環境を与える」
賛成。会社がやることとしてはこれなんだろうなーと。
「考える」部分と「決める」部分です。
そう、決められないと仕事は進まない。
読みながら、ウンウンうなってしまった。
かなり同意できるポイントが多い本だった。
試行錯誤
今の働き方は、その変化を続けた10年間の結果なのです。
・どのようにして採用するか?
・仕事の評価と給与の決め方
・会議のあり方
・オープンであること。公明正大であること。
・バーチャルオフィスの概念
・etc.
さまざまな取り組み、そのトライの中でうまくいったこといかなかったこと、それらが語られていた。
また、「既存のビジネスモデルに従うのをやめる」〜納品のない受託開発、という項もあり、ビジネスモデルについても今に至った経緯や考え方が語られる。
学びの多い本だった。
終わりに
こんな会社があるのか!といった驚きとともに、しかし具体例を持って語られるためイメージをしながら読み終えることができる。
いきなり自分の所属する組織ではできないな、とは思うものの、一方でソニックガーデンという会社がそこまでに至った理由のところは追っかけないといけないと思った。それは常に考えながら改善し、新しい発想も持ちながら前に進むこと。
視野を広げ、テクノロジーを活用しながら効率的でクリエイティブな働き方を模索する。そういうことを考えながら日々を過ごした方が楽しいんだろうなと思う。
そういう意味において、働く全ての人にお勧めできる本かなと思った。