プラント建設は、契約書に基づき仕事を遂行するのが一般的である。
オーナーと呼ばれる会社がそのプラントを運営するにあたり、コントラクターと呼ばれる会社はオーナーから依頼を受けてプラントを建設する。建設完了したプラントはオーナーに引き渡され運転される。
オーナーは、どんなプラントが欲しいのかについて詳細を契約書に書き、コントラクターと協議の後に契約締結の上、設計・工事が開始される。
この契約書は海外では特に重要で、オーナーも、コントラクターもこの契約書のレビューには大変気を使う。ここの契約書に潜むリスクの見積もり方が甘いと会社が潰れかねないからである。
EPCは、Engineering, Procurement and Constructionの略で、設計・調達・建設を行う大規模プロジェクトによく使われる用語。プロジェクト遂行に問題がありスケジュール・コスト超過となると、発注者か受注者に多大な損失が発生しかねない。
僕はプラントエンジニアは契約書にも精通していることが重要と考える。自分の仕事との関わり、その判断は会社にどのようなリスクをもたらすのか、何をして、何をしてはいけないのか、を理解することは重要。
本書、『英文EPC契約の実務』は、英文契約書を基礎から学べる日本語で書かれた貴重な一冊である。
shallや notwithstandingなどの契約書用語から定義語の書き方、EPC契約書の構成、重要なポイント、さらには保険の話や損失を出さないために気をつけるべき点、リスクの考え方、etc。基礎から幅広い範囲が解説される。
また、契約前から設計、施工、性能確認までの流れもカバーされる。
裁判・仲裁・調停の違いなどもEPC契約書で知っておくべき点で解説されていたりする。なぜ仲裁が選ばれやすいか、その際の注意点も勉強になった。経験はしたくないけれども。
契約書のベース、なぜこの条項が必要なのか、どう考えて読むべきか、にも言及されており大変理解が深まる。それらの解説に加え、「そうは書いてあるけど、実際こうなったらどう契約書の文言が解釈されるの?」まで書かれている。
本書のタイトルの通り、「実務」に近い本である。
著者は本郷貴裕氏、東芝で法務として海外発電所建設等に携わった方。なるほどウエスチングハウスの話がよく出てくるわけである。
本書で語られる損失案件について、はとても参考になる。プロジェクト関わる人は読むべき。明日は我が身。
ところどころはさまれるコラムも充実している。
英語上達方法はとても納得のいくものであった。
契約交渉にのぞむ心持ちのコラムはとても同意できる内容だった。
最後のコラムは全社会人に響く内容ではないかと思う。
本書の第1版発行は2020年。もっと早く出版され自分がこの本に早く出会えていれば、、と思う一方で、東芝さんに色々あったから出たのかもしれないと推測するが、今だからこそ読める一冊なのかもと思ったり。
繰り返すが、海外で活躍が期待されるプラントエンジニアには必読の一冊。オーナー側であろうとコントラクター側であろうと関係なく役に立つので強くお勧めしたい。お値段はそれなりにするが、簡単に元がとれるだろう。
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