「段取り八分だよ、なぁ!」
現場で聞いた、足場工事の監督さんのセリフが今でも印象に残っている。
僕はエンジニアとして十数年仕事をしてきたが、職場は現場に近いケースが多かった。勤務中は作業着ということがほとんど。スーツでの仕事は慣れないので、作業着で仕事する方がお気に入り。
設備を設計したり、工事を担当したり、いろんな経験をさせてもらった。
冒頭のセリフは、とあるプラントの建設現場を確認していた際に耳に入ってきたものだ。
施工の手順がよろしくなかったようで、ある作業の際に現場で足場との干渉が発生してしまっていた。
あー…という感じなのだが、工事工程に若干でも影響は出るし、何より現場の皆さんからするとチェックしておきなさいよー、ということになる。
大きな影響を伴う不具合ではなかったので不幸中の幸いだが、現場をよくみてしっかり準備することの大切さを学んだ。
- 現場でうまくいくか、しっかりとチェックして手順を決める必要がある
- 作業順序はそれでいいのか
- 作業に必要な人数を揃えられるか
- その作業に危険は伴うか、治具などを使って仮止めしておかなくていいか
- その作業に必要な材料やツールは手配しているか、これから手配なら納期は大丈夫か
- ツールを使うなら動力は確保できているか?(電動工具など)
- 万一うまくいかなくて作業がやり直しになった際、予備で持っておくべき材料はあるか
- etc.
その場その現場毎にケアすべき点がたくさんあるだろう。
段取り八分はどんな仕事にも当てはまることだと思う。
プレゼンをすることになったとしたら、誰もが準備を行うはずだ。
伝えたい内容を整理し、パワーポイントやKeynoteで資料を作る。何を話すかを考え、時間が適切かをチェックする。
どこまで準備するかは、人それぞれ、ケースバイケース。Apple創業者のSteve Jobs氏は新製品発表のプレゼン準備を相当入念にしていたと読んだことがある。
例えば新しいシステムを導入するとき、不具合がないかのチェックだったり、ユーザーへの説明を丁寧にしておくなり、様々な準備があるはず。
関係者が多いプロジェクトの場合、必要な人たちとしっかり情報共有して事前に皆で連携を取っておくようにしておいた方がいい。当日バタバタするのはできるだけ避けるべき。
どんな仕事も段取り八分なのだ。
どうやったらいいか分からなければ、できる人を観察
具体的にどうやったらいいか分からない。
そんなときは周囲のできる人を観察しよう。段取りがいい人というのは必ず職場にいるはず。その人の動き、メールや電話のやりとり、仕事の中身を観察して盗むべし。これが1番の近道と思う。
できる人の隣に座れるチャンスがあるなら積極的にその機会を活かそう。
COVID-19で在宅勤務が中心になるデメリットがあるとしたら、近くで観察してスキルを盗むということがしにくくなること。これは残念でならない。
あるときいきなり八分にはならない
段取りは積み上げるもの。いきなり八分になるものではない。
事前事前に検討を進め、課題があれば余裕を持って解決し、関係各所と共有しておく。
現場確認が必要なら現場に足を運ぶ。事前トライアルが必要ならテストを行っておく。事前トライアルをするにあたっては、そこで何を確認するのか詰めておく。手順書が必要なら作っておく…と逆算して動く。
何が必要かリスト化するのもケースバイケース。ここを考えることも準備の一つだ。むしろここが1番重要と言ってもいい。最初によく考える、ということ。
いきあたりばったりの仕事で失敗すると、信頼を得られなくなってしまう。先をよく見て、段取り八分で対応していこう。仕事の成功確率を高め、信頼度を上げることができると思う。
なお、人も機材も資材もお金も動き、えてして工程に余裕がない現場建設工事においては段取り八分は「必須」である。安全に着実に作業をする必要があるから。
あらためて、僕は、現場のおっちゃん(親しみを込めて)から聞いた言葉を、多くの人にお伝えしたい。
「段取り八分だよ、なぁ!」。
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