伊藤洋一さんのラジオで勧められていた「コンビニ外国人」という本を読んだ。
さらっと読めてしまう分量なので、興味がある方はぜひ読んでみてほしい。
概要
現在日本のコンビニで働く外国人は大手三社だけで2017年に4万人を超えていて、全国平均で見るとスタッフ20人のうち1人は外国人。
新大久保駅のある新宿区には2017年10月時点で42,000人の外国人が住んでいるとのこと。区全体の人口における外国人比率は約12%で、これは移民の多いヨーロッパ諸国と同じ水準だそうだ。
新宿区に限らず、ここ数年で大きく社会が変わりつつある。
この本では、コンビニで働く外国人がどのような経緯で、なんの目的で日本に来て、どんな環境で生活しているのか、実態を紐解いてくれる。
そこには母国から送り出す人や組織、日本語学校の実情、アルバイトをしなければならない状況とそれを取り巻く日本の法律、人手不足に悩む日本のコンビニ、日本や各国の社会的問題etc.と様々な事情が複雑に関わっている。
著者は自身の調査をもとに実例を上げながら話を展開し、具体的でわかりやすい内容にまとめてくれている。
「コンビニ外国人」というタイトルながら、日本の抱える問題がよく分かるいい本。誰もがここ数年「コンビニのレジは海外の人が増えたなぁ」と思っていたであろう中、それを本にまとめたところに価値があるのではないだろうか。切り口が斬新。
この本を読んでいて、昔アルバイトで中国から来た留学生と一緒に働いたことを思い出した。
僕のアルバイト時代の経験と留学生
僕は学生時代某ファーストフード店でバイトしていたことがある。15年くらい前の話。
当時からすでに海外から来た留学生はたくさんいて、夕方の時間帯のスタッフは日本人の方が少ないときがあるくらいだった。
日本語のレベルは人それぞれだったけど、ペラペラな人も多かった。そして頭のいい人ばかりだった。
一緒に働いてみて思ったのはみんな同じ人間なんだな、ということ。
怒るときは怒るし、冗談を言うときはいう、笑うときは笑うし、仕事が終わって早く帰れるときは嬉しいし、逆にトラブって帰る時間が遅くなると嫌な顔をする。
同じ人間なんだから当たり前なんだけど、僕が外国人の人たちにあまり違和感を感じないというか、普通の人と話す感覚を持てるのは20歳くらいの時のバイト経験が大きいと思う。
中国からの留学生が多かったけど、皆さん日本で勉強したら中国に戻って事業をやるだとか、何かしらの目標を持っていた。
日本でお金を稼がないと生活できないので、シフトをかなり埋めてくれるのも留学生の皆さん。人の少ないお店にあって、店長や社員さんもかなり助かっていたと思う。
留学生ネットワークというのもあって、新しく中国から日本にやってきた留学生をお店の採用面接に連れてくる人もいた。
日本語は話せないけど、ベテランの中国人トレーナーが最初は中国語で教育。日本語も一緒に教育。
できる留学生なら最初の数ヶ月で仕事も日本語もある程度できるようになって戦力になる。お店としては助かる。
日本語も話せずお金を稼ぐ手段もなかった留学生はそのベテランの人に助けてもらう形になるので、一定の金額は支払う仕組みだったみたい。
上記の人たちは厨房のメンバーであまり接客することはなかった。レジ打ち、接客対応は基本日本人か日本語ペラペラの人だけだった。でも今の時代、コンビニでレジ対応するのも普通に海外の方がやっている。
人手不足のコンビニも外国人労働者に頼らざるを得ない。切迫した状況。
時代はどんどん変わっているんだなぁと。
「縮小ニッポンの衝撃」とのつながり
以前、「縮小ニッポンの衝撃」という本を読んでレビューを書いたけど、「コンビニ外国人」の内容はあるところでつながってくる。(著者は違うしその意図はないが)
それは少子化で急激に人口が減少するコミュニティが外国人とうまくやっていく道も模索しているという点。
本の後半に広島県の安芸高田市の紹介がある。「多文化共生」を掲げ、まずは安芸高田のファンを増やし、長期的に外国人も含めて人口減少対策をとっている。
なるほど、日本人だけで人口減少を止めるのも無理だから、ということか。
各自治体が知恵を絞って考えているのだなぁと。
知らないことはたくさんあるな、と。
今後日本の人口はジェットコースターのように減っていくらしい。他の国に人口でも経済でも抜かれていく。そういった場合、今後はそっぽを向かれてしまいかねない。日本へ留学する、という人も減ってしまう。
だから日本の魅力を国として高め、人が集まるようにしなきゃいけないね、という話。
「縮小ニッポンの衝撃」NHKスペシャル取材班、「コンビニ外国人」芹沢健介著。
2冊を続けて読むと、日本の現実をより実感することができると思います。
あまり悲観的になりすぎるのはよくないけど、実態を知る努力は必要かな、と。
今の日本、そして将来の日本を知るために、自治体で働く人はもちろんビジネスを展開する人も読んでみてはいかがでしょうか。
コンビニ外国人 (新潮新書)@Amazon