伊坂幸太郎さんの「ホワイトラビット」を最近読み終えた。
いわゆる伊坂さんワールド全開で、途中まで読んでしまったら最後までだーっといってしまうしかない。
伏線の数、状況の整理と把握、登場人物の整理と、比較的理解に時間がかかる作品だと思う。何も考えずにさーっと読んでいると、後半で「なにー!」となることは必至。
Amazonの書評を見れば、だいたいの評判も分かるし、どんな作品か想像できるだろう。ここでは僕の感じたことを書きたい。
「ホワイトラビット」のレビューとして書きたい感想は「家族」について、です。
家族
僕は小説にもメッセージ性を期待してしまうのだけど、今作はそこまでのメッセージ性を受け取ることはできなかった。
けれども今作も”家族”が1つのポイントになっていると感じた。伊坂さんの小説ではよく家族が描かれる。「オー!ファーザー」は特に好きな小説の1つ。
「ホワイトラビット」には以下の家族が登場。
- 立てこもり事件の被害者の母と子。(夫も描かれている)
- 立てこもり事件を起こすことになった男と、助けを待つ妻
- 心にかかえるものを持つ夏之目課長。回想にでてくる娘との会話
物語を構成するキャラクターは、家族がいてそれぞれが何かを抱えていて、みなが必死に生きている。
そこになんだか感情移入してしまって、僕はこの小説がお気に入りの1つになった。
特によかったのは夏之目課長の回想。娘との人生についての会話で出てきたフレーズ。
「はい、生まれました。はい、死にました。みたいなものじゃないのか」
「違うよ、はい、生まれました。はい、いろいろありました。はい、死にました。」
『ホワイトラビット』伊坂幸太郎
宇宙に比べれば僕らの人生なんて…、となってもおかしくないところ、「はい、いろいろありました」の大事さを教えてくれる。
自分自身も将来娘に人生を教わる日が来るだろうか。
まとめ
伊坂さんらしい小説を読みたい人にとって、ハズレのない小説になるだろう。
張り巡らされた伏線と最後の回収の見事さ。テンポの良い会話。
著者の洞察の深さと、それを駆使した登場人物の会話。心にささるフレーズ。
壮大な物語ではないかもしれないけれど、日常から大きく外れない世界で繰り広げられる人間の物語。これが伊坂さんの描く小説なのではないでしょうか。
ホワイトラビット@Amazon
ホワイトラビット [ 伊坂 幸太郎 ]@楽天