テンポよい会話。読後の爽快感。
現実と非現実を行ったり来たりの物語。
身近でありながら身近でない。だからこそ小説を読んでいる感がある。それでいて学びや気づきがある。
いつもそれを求めて伊坂さんの小説を手に取ってしまう。
そしてさすがだな、と唸らされる。
今回読んだのは、クジラアタマの王様。
この小説は途中で挟まれる絵がキーになっている。
挿絵の意味は最初わからないが、読み進むに連れて意味がわかるようになってくる。
現実世界の会社でよくありそうな場面から入り、だんだん現実と非現実が混ざっていく感覚。
途中、新型インフルエンザの話になるのだが、コロナ禍の情景と似ていて最近の話のように思えた。しかし19年の夏に文庫本が出たとのことで、COVID-19をベースにしたものではないらしい。面白いものだなと。
本書の内容は詳しく書かないとして、学んだことは何かと言われれば。今目の前で起きていることに対してできることをする、ということだろうか。
いつも伊坂さんの本を読むときは何か伝えたかったメッセージがあるのかな、と思いながらページをめくっていくが、今回もそういうものを感じた。何が現実で何が夢か、僕らはどう生きるべきか。
さて、伊坂さんの小説で最初にお勧めしますか、というと個人的にはNoかなと。もっとうなるような伏線回収がある小説はあるし、もっと不思議な世界観の本はあるし、もっと優しい人間の物語もある。伊坂さんワールドとして本書は楽しめるし、絵と文章を関連づけるという新しい取り組みの一冊ではあるけれど、一番に読まなくても良いかなーという印象を持った。
伊坂さんの小説をある程度の冊数読んだ人にお勧めしたい一冊。